この記事はパーフェクトデイズの名言や名シーンを振り返り、作品に込められたメッセージを考察する内容になっています。
まだ映画をご覧になっていない方は、作品を鑑賞してからお読みいただくことを強くお勧めします。
5つの名言と2つの名シーンを軸に映画の内容を掘り下げます。
今時の映画と比べて説明するセリフがない作品で、観る人によって受け取り方もさまざまかと思いますが、私なりに感じたことを分かりやすくお伝えします。
ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
パーフェクトデイズの名言・名シーン7選
以下、5つの名言と2つの名シーンを選びました。
- 「なんでずっと今のままでいられないんだろうね。」
- 「この世界にはたくさんの世界がある。つながっているようでつながっていない世界がある。」
- 「今度は今度、今は今。」
- 「ここ、前に何があったっけ?」
- 「濃くなんないなんておかしいですよ。何も変わらないなんて、そんな馬鹿な話ないですよ。」
- ラストシーンの涙
- 朝、空を見上げてニコリと微笑む
それでは一つずつ見ていきましょう。
なんでずっと今のままでいられないんだろうね。
平山が週末だけ通う居酒屋のママのセリフです。
穏やかな日々もいつかは終わりがくることへの不安や寂しさが込められているように感じました。
ママの表情から、このままでいたかったけれど叶わなかった過去を経験しているのが分かります。
後に出てくる元夫とのことを思い出していたのかもしれません。
この世界にはたくさんの世界がある。つながっているようでつながっていない世界がある。
家出してきた姪のニコに、ニコの母との関係性を聞かれ、平山が返したセリフです。
平山は一般社会と切り離された世界に生きる人々と多く関わっています。
同僚のタカシ、その彼女で水商売をしているアヤ、タカシの耳が好きなデラちゃん、公園で謎のポーズをとるホームレス等々。
平山を含めたマイノリティの住民たちに思いを寄せ、たくさんの世界があると表現したのではないでしょううか。
今度は今度、今は今。
先ほどと同シーンのセリフで、海に行こうと誘うニコに「今度っていつ?」と聞かれ、平山が「今度は今度、今は今」と答えます。
「今度」というのはどのような意味なのでしょうか。
今度
① このたび、今回 ② この次
どちらかでいえば「② この次」の意味になりますが、映画の文脈としては少し違います。
「確実なのは今この瞬間だけで、この次があるか誰にも分からない。」
そんな意味合いが込められているように感じました。
ここ、前に何があったっけ?
近所のおじさんが、建物が取り壊された後の空き地を見て言います。
私たちの日常でもよくある光景ですが、改めて映画のワンシーンとして見ると意味深に感じられます。
何十年もあったはずなのに、その場所からなくなってしまったら何があったすら誰も覚えていない。
初めから何もなかったかのように人々から忘れられてしまう、人生の無常さを感じました。
濃くなんないなんておかしいですよ。何も変わらないなんて、そんな馬鹿な話ないですよ。
ママの元夫と平山が川辺で話すシーンでの一言です。
ガンで余命わずかの元夫が「結局何も分からないまま終わっちゃうんだな。」と言うのに対し、いつもは穏やかで寡黙な平山が少しムキになって返答します。
この世に自分がいてもいなくても何も変わらないかもしれない無常感に抗おうとする一面をみたように思いました。
ラストシーンの涙
いつものように音楽を聴きながら出勤する車内で一人、平山が笑い泣きするするラストシーンは最も印象的でした。
平山が眠りにつく度に出てくる夢の中のような白黒シーンといい、観客の自由な捉え方に委ねられた余白の多い映画です。
このラストシーンも人によって受け止め方はさまざまだと思います。
何故だか分からないけれど言葉で言い表せない涙があふれてくる、そんな名シーンでした。
朝、空を見上げてニコリと微笑む
晴れの日も雨の日も、平山は家から出たら空を見上げ、ニコリと微笑みます。
始めは日常を丁寧に生きる人物像を表しているのだと思っていましたが、ラストシーンを観た後、微笑みの裏にある複雑な感情があることに気づきました。
平山は静かな毎日を手放しで満喫している訳ではないのかもしれません。
穏やかでいるようで、心の奥底では人生に肯定的に受け止められるよう、何かと対峙しているのだと思います。
決して無理して自分に嘘をついている訳ではありませんが、どんな世界の住民であれ強く在ろうとする姿勢が必要なのです。
空を見上げた微笑みの中に、平山の人生に対する心構えが表れているように感じました。
パーフェクトデイズ(完璧な日々)とは
今日とまったく同じ日は1日たりともありません。
毎日がルーティンの繰り返しだとしても、他者と関わる日々には必ず小さな変化が生じます。
むしろ、変わり映えのしない日常を送るからこそ小さな変化に気づき、その変化に心を寄せることができるのでしょう。
完璧な日々とは、与えられるものでも作り上げるものでもなく、自分が世界をどのように受け止めるかという在り方の連続なのだと私は考えます。
平山は何気ない日常に小さな楽しみを見出し、当たり前に存るモノを愛でて生きることを選択しています。
大事なのは自分の生き方を自己選択して、肯定的に受け止めようとする姿勢なのです。
人それぞれのパーフェクトデイズの求め方を示唆する映画だと思いました。
コメント
今日この映画を見ました。
人生と社会の縮図のような映画で、見ていて居心地が良いような、でもどこか虚しく苦しくもなるようでした。
このブログの記事で、改めて多くの要素が散りばめられていたなと思えました。ありがとうございます!
コメントいただき、有難うございます。
観ている人が自分に置き換えて考えずにはいられない、素晴らしい映画作品ですよね。
また折に触れて観返したいなと思います。